2024/8/11

非公開会社って何?その特徴は?

会社は、定款で定めることにより譲渡による株式の取得について会社の承認が要する株式を発行することができますが、このような譲渡制限を会社が発行する全ての株式に設定しているか否かによって非公開会社と公開会社に区別されます。
 
非公開会社と公開会社では、株式の譲渡に会社の承認を要するかどうかという点だけでなく、会社の機関設計や運営などの点で大きく異なる点があります。
 
 
 
 
 
非公開会社って何?その特徴は?
 
 
目次
1.公開会社と非公開会社
2.非公開会社の特徴
3.おわりに
 
 
 
1.公開会社と非公開会社
 
 
株式は、原則として自由に譲渡することができますが、定款に定めることによって譲渡による株式の取得について会社の承認を要する株式を発行することができ、このような定めがある株式を「譲渡制限株式」といいます。
 
このような譲渡制限株式を発行する会社の中でも、発行する全部の株式に譲渡制限を設けている会社を「非公開会社」といい、発行する全部または一部の株式に譲渡制限を設けていない会社のことを「公開会社」といいます。
 
したがって、会社が複数の種類の株式を発行しており、そのうち1種類でも株式の譲渡制限が設定されていない場合は公開会社ということになります。
 
なお、会社法上の公開会社は、必ずしも証券取引所における上場企業を意味するものではありません。
 
 
 
2.非公開会社の特徴
 
 
非公開会社では、公開会社に比べて次のような点に特徴があります。
 
 
① 取締役会・監査役の設置が不要

公開会社では、取締役会の設置が義務付けられています。そしてこの場合、取締役の人数が3人以上必要となり、また原則として1人以上の監査役の設置が必要となります。

これに対して、非公開会社では取締役会や監査役の設置義務はありません。
 
 
② 取締役と監査役を株主に限定できる

非公開会社においては、定款で取締役と監査役の資格を株主に限ることができます。
会社法では、原則として、役員が株主でなければならない旨を定款で定めることができないと定められていますが、これは株式会社では所有と経営の分離が進んでいるため、会社の所有者である株主よりも、広く会社経営又は監査に関する専門的知識や能力を有する者に任せた方が合理的であると考えられているからです。
 
一方、非公開会社においては、所有と経営の分離が必ずしも進んでいるわけではなく、会社の経営や監査に人材を広く確保するという要請があるわけではないことから、定款で定めることによって取締役と監査役の資格を株主に限定することが認められています。
 
 
③ 役員の任期を伸長することが可能

会社法では、原則として取締役の任期は2年、監査役は4年と定められています。
 
しかし、非公開会社では、定款によってそれぞれ10年まで伸長することが可能です。
役員の任期が満了した場合、その都度、改選手続や登記が必要となるため、任期が長ければ改選手続や登記の手間や費用が抑えられることになります。
 
 
④ 株主総会の招集通知の期限

株主総会を開催する場合、公開会社においては原則として株主総会の日の2週間前までに書面等で通知しなければなりません。これに対して、非公開会社では原則として1週間前までの通知でよく、取締役会を置いていない非公開会社では、定款に定めることで更に期間を短縮することも可能です。
 
 
⑤ 発行可能株式総数の上限に制限がない

発行可能株式総数とは、その会社が発行できる株式の上限の数のことです。例えば、発行可能株式総数が5000株の会社で、既に発行済の株式数が3000株の場合、あと2000株しか発行できないということになります。もしここで、新たに3000株を発行するのであれば、定款を変更して発行可能株式総数を増やす必要があります。
 
このとき、公開会社においては、発行済株式数の4倍までしか発行可能株式総数を増やすことはできませんが、非公開会社では、発行可能株式総数を増やす際の制限が決められていないため、例えば、発行済株式数の10倍まで増やすことも可能です。
 
 
⑥ 属人的株式の発行が可能

属人的株式とは、「剰余金の配当を受ける権利」「残余財産の分配を受ける権利」「株主総会における議決権」の3つの権利に関して、その持ち株数にかかわらず、株主ごとに異なる取扱いができる株式のことをいいます。
 
株式会社は、株主に対し、その有する株式の内容や数に応じて平等に取り扱わなければならないというのが原則ですが、非公開会社においては、定款に定めることで上記のような属人的株式を設定することができます。
 
 
⑦ 役員選任権付種類株式の発行が可能

株式会社は、種類株式といって、一定の事項に関して権利の内容が異なる2種類以上の株式を発行することができます。
 
この種類株式のうち、取締役や監査役などの役員を選任する権利を持つ種類株式のことを役員選任権付種類株式といいます。
 
通常、取締役と監査役は株主総会の決議によって選任されますが、役員選任権付種類株式を発行している場合、株主総会の決議を経なくとも、役員選任権付株式を持つ株主の種類株主総会の決議のみで役員を選任することができます。
 
この役員選任権付種類株式は、公開会社では発行することはきませんが、非公開会社においては発行することができます(ただし、その非公開会社が、指名委員会や監査委員会および報酬委員会を設置する指名委員会等設置会社である場合は発行できません)。
 
 
 
3.おわりに
 
 
上記は一例ですが、非公開会社は、株式の外部流出を抑えて会社の経営権を安定させることができたり、会社の運営に関する手続の負担を減らすことができるという点がその特徴で、日本では多くの会社が採用している会社形態です。しかし、その一方で、株式の譲渡に制限があることから、資金調達の範囲が限られてしまう点には注意が必要でしょう。
 
 
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