2024/8/17

特例有限会社とは

有限会社とは、日本において過去に設立が認められていた会社形態の1つです。平成18年の会社法施行に伴い根拠法である有限会社法が廃止され、以降、有限会社の新設はできなくなりましたが、会社法施行の際に存在していた有限会社は、以後は株式会社として存続することになるものの、通常の株式会社を規律する会社法に加えて、特例として「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(以下、「整備法」といいます。)の適用を受けることで、従前の有限会社に類似した制度の適用を一定限度で引き続き受けることができます。
 
このような会社を「特例有限会社」といいます。 
 
 
 
 
 
特例有限会社とは
 
 
 
目次
1.特例有限会社とは
2.特例有限会社に関する主な規定
3.旧有限会社のときの定款はどうなる?
4.通常の株式会社への移行
 
 
 
1.特例有限会社とは
 
 
会社法が施行される以前、有限会社法によって設立された旧有限会社は、株式会社よりも規制が緩やかであり、比較的小規模かつ簡素な会社形態であったことから、家族経営や個人事業の法人成りといった事業の規模を大きくする必要のない中小規模の事業にとって非常にメリットのある会社形態でした。
 
平成18年の会社法施行によって株式会社の最低資本金制度が撤廃され、また、会社の機関設計も柔軟になると、株式会社と有限会社を分ける意義が薄くなってしまったため、有限会社の制度は廃止されました。
 
なお、旧有限会社の主な特徴は以下のとおりです。
 
① 資本金300万円以上
② 社員(出資者)の数が50人以内
③ 取締役が1名以上必要
④ 役員の任期がない
⑤ 監査役の設置は任意
⑥ 決算公告の義務がない
 
しかし、会社法の施行により、旧有限会社にも通常の株式会社と同様の規定を適用すると旧有限会社法よりも厳しい規制になってしまいますので、整備法は多くの経過措置や特例を設けて旧有限会社に配慮しています。
 
その1つとして、会社法施行の際に存在していた有限会社は、以後は株式会社として存続することになるものの、その商号中に「有限会社」という文字を使用しなければならないことと規定し、このような有限会社を「特例有限会社」と呼ぶことにしています。
 
 
 
2.特例有限会社に関する主な規定
 
 
特例有限会社には会社法の株式会社に関する規定のほか、整備法の規定も適用されます。したがって、整備法に規定されている事項については、会社法に優先して適用されることになります。その主な内容は以下のとおりです。
 
 
(1)会社が発行する株式は譲渡制限株式
 
会社法施行の際に存在する旧有限会社は、会社法施行後は、株式会社として存続するものとされたため、社員総会は株主総会、社員は株主、持分は株式、出資1口は1株とみなされますが、この株式を譲渡するには原則として会社の承認が必要となります。
 
ただし、譲渡する相手が株主の場合には会社の承認があったものとみなされるため、株主同士での譲渡については会社の承認は不要です。
 
 
(2)株主総会と取締役は必須だが、監査役は任意
 
特例有限会社では、株主総会と取締役は必ず置かなければなりませんが、監査役を置くかどうかは任意で、監査を置く場合でもその権限を会計監査に限定することができます。
 
なお、取締役会、会計参与、監査役会、会計監査人、委員会及び執行役を置くことはできません。
 
 
(3)取締役や監査役の任期がない。
 
通常の株式会社では、取締役の任期は原則として2年、監査役の任期は原則として4年とされており、非公開会社では取締役及び監査役の任期を最長で10年まで伸長することも可能です。
 
しかし、特例有限会社においては取締役と監査役の任期について法律上の制限がありません。
 
 
(4) 決算公告が義務ではない
 
株式会社には決算公告の義務があり、定時株主総会の終結後遅滞なく定款で定めた方法に従って貸借対照表等を公告しなければなりませんが、特例有限会社では会社の決算公告が義務とはされていません。
 
なお、特例有限会社においても、法定準備金の減少、減資、合併、会社分割及び組織変更をする場合には公告をしなければなりません。
 
 
(5)みなし解散の規定が適用されない
 
「みなし解散」とは、12年以上の間登記記録が変更されていない株式会社が公告等の手続を経て解散したものとみなされることをいいますが、特例有限会社ではこのみなし解散の規定は適用されません。
 
 
(6)株主総会の特別決議の要件が厳格
 
会社の定款をする場合のような株主総会の特別決議を要する場面において、通常の株式会社の場合、議決権を行使することのできる株主の議決権の過半数(定款で3分の1以上まで緩和することが可能)が出席し、出席した総株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要なのに対し、特例有限会社の場合は総株主の半数以上(定款でより厳格にすることが可能)で、かつ、当該株主の議決権の4分の3以上の賛成が必要とされており、通常の株式会社よりも決議要件が厳しいものとなっています。
 
 
(7) 組織再編の方法に制約がある
 
会社法では組織再編の方法として、合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付の5つが定められていますが、特例有限会社は以下の場合において当事者となることができません。
 
① 新設合併、新設分割における新設会社
② 吸収合併存続会社、吸収分割承継会社
③ 株式交換、株式移転、株式交付
 
したがって、特例有限会社では吸収合併及び新設合併の消滅会社、新設分割及び吸収分割の分割会社になることだけが認められています。
 
 
 
3.旧有限会社のときの定款はどうなる?
 
 
会社法施行の際に存在する旧有限会社は、会社法施行後は、株式会社として存続するものとされ、旧有限会社の定款は、存続する株式会社、すなわち特例有限会社の定款とみなされます。
 
ただ、特例有限会社は会社法の規定による株式会社となったため、定款の記載について多くの「みなし規定」が設けられています。したがって、従前の定款が自動的に読みかえられることになることから、必ずしも定款を変更しなければならないわけではありません。
 
ただし、株主には会社の定款を閲覧を請求する権利があり、これに会社が応じる場合には、定款に記載又は記録がないものであっても、定款に定めがあるものとみなされる事項を示さなければならないとされているため、整備法に適した定款の書き換えを行うなどの措置を講じておくのがよいでしょう。
 
 
 
4.通常の株式会社への移行
 
 
特例有限会社は、定款を変更してその商号中に株式会社という文字を用いる商号の変更をすることができ、これにより通常の株式会社として全面的に会社法の適用を受けることができます。
 
この特例有限会社から株式会社への移行は、商号変更後の株式会社の設立登記と商号変更による特例有限会社の解散登記をすることにより効力が生じます。
 
なお、一度株式会社に移行した場合、特例有限会社に戻すことはできないことには注意が必要です。
 
 
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