2024/10/4
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株式会社の代表取締役等の住所を非表示にするには? |
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商業登記規則等の改正により代表取締役等住所非表示措置の制度が創設され、令和6年10月1日から施行されています。 これにより、株式会社の代表取締役、代表執行役又は代表清算人(以下「代表取締役等」といいます。)の住所の一部を登記事項証明書や登記事項要約書、登記情報提供サービス(以下「登記事項証明書等」といいます。)に表示しないことができるようになるため、代表取締役等のプライバシーの保護を図りつつ、起業が促進されることが期待されています。 今回は、この制度を利用する方法について解説します。 株式会社の代表取締役等の住所を非表示にするには? 1.登記申請と同時に申し出ること 代表取締役等住所非表示措置の申出は代表取締役等の住所が登記されることとなる登記の申請と同時にする場合に限りすることができます。代表取締役等の住所が登記されることとなる登記とは、以下のような登記です。 ・設立の登記 ・代表取締役等の就任(重任を含む)の登記 ・代表取締役等の住所移転による変更の登記 ・管轄外本店移転をする場合の新本店所在地における登記 なお、代表取締役等の重任の登記や管轄外本店移転をする場合の新本店所在地における登記に関して、既に登記されている代表取締役等の住所に変更がない場合であっても、代表取締役等住所非表示措置の申出をすることができます。 そして、登記の申請書に以下の内容を記載します。 ① 代表取締役等住所非表示措置を希望する旨 ② 代表取締役等住所非表示措置の対象となる者の資格、氏名及び住所 ③ 申出に当たって添付する書面(実質的支配者リストの保管の申出をしている場合は、その旨及び申出先) 2.所定の書面を添付する 代表取締役等住所非表示措置の申出に当たっては、以下の区分に応じた書面の添付が必要となります。 (1)上場会社以外の株式会社の場合 ① 株式会社の本店所在場所における実在性を証する書面 具体的には以下のような書面が該当します。 ・代表取締役等住所非表示措置の申出と併せて行う登記の申請を受任した司法書士などの資格者代理人が、株式会社が本店の所在場所において実在することを確認した書面 ・株式会社が受取人として記載された配達証明書と株式会社の商号及び本店所在場所が記載された郵便物受領証 ② 非表示を希望する代表取締役等の氏名及び住所が記載されている市町村長等の証明書 具体的には以下のような書面が該当します。 ・住民票の写し ・戸籍の附票の写し ・印鑑証明書 ・日本国領事が作成した証明書 ・運転免許証、マイナンバーカード等の写し(代表取締役によって「原本と相違ない」旨の記載と記名があるもの) なお、代表取締役等住所非表示措置の申出と併せて行う登記の申請書にこれらの証明書が添付されている場合には、それを援用することができるため、改めて添付する必要はありません。 ③ 株式会社の実質的支配者の本人特定事項を証する書面 具体的には以下の書面が該当します。 ・登記の申請を受任した司法書士又は司法書士法人が「犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号)」の規定に基づき確認を行った実質的支配者の本人特定事項に関する記録の写し ・実質的支配者の本人特定事項についての供述を記載した書面であって公証人法の規定に基づく認証を受けたもの ただし、代表取締役等住所非表示措置の申出と併せて行う登記の申請の日の属する年度又はその前年度に認証を受けたものに限られ、また、記載事項として、実質的支配者の氏名、住居及び生年月日が必要となります。 ・公証人法施行規則(昭和24年法務府令第9号)の規定に基づき定款認証に当たって申告した実質的支配者の本人特定事項についての申告受理及び認証証明書 ただし、代表取締役等住所非表示措置の申出と併せて行う登記の申請が当該株式会社の設立の日の属する年度又はその翌年度に行われる場合に限ります。 なお、代表取締役等住所非表示措置の申出と併せて行う登記の申請日の属する年度又はその前年度において、株式会社が実質的支配者リストの保管の申出をしている場合、これらの書面を添付する必要はありません。 関連コラム:実質的支配者リストの制度について 代表取締役等住所非表示措置の申出と併せて行う登記の申請と同時に、実質的支配者リストの保管の申出をすることが認められる場合もありますが、事前に法務局に確認するようにしましょう。 また、既に代表取締役等住所非表示措置が講じられている場合において、その代表取締役等の住所変更や新たに住所非表示とする代表取締役を追加するときは、上記②の書面のみ添付すればよいとされています。 (2) 上場会社である株式会社の場合 ① 株式会社の株式が上場されていることを認めるに足りる書面 これは、その株式会社について上場に係る情報が掲載された金融商品取引所のホームページの写し等の書面が該当します。 この場合、株式会社の商号に加え、設立年月日や代表取締役の氏名など、既に登記されている事項と同じ内容が記載されているものを添付する必要がある点には注意が必要です。 なお、既に代表取締役等住所非表示措置が講じられている場合、この書面の添付は不要です。 4.おわりに 代表取締役等の住所非表示の措置については、プライバシーの保護を図ることができるメリットがある一方、法務省のホームページにおいても以下のことが掲載されているように、様々な不都合が起こり得ることも懸念されていますので、申出をするかどうかについては慎重に検討する必要があるでしょう。 ※ 注意 ※ 代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合には、登記事項証明書等によって会社代表者の住所を証明することができないこととなるため、金融機関から融資を受けるに当たって不都合が生じたり、不動産取引等に当たって必要な書類(会社の印鑑証明書等)が増えたりするなど、一定の影響が生じることが想定されます。 そのため、代表取締役等住所非表示措置の申出をする前に、このような影響があり得ることについて、慎重かつ十分な御検討をお願いいたします。 代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合であっても、会社法(平成17年法律第86号)に規定する登記義務が免除されるわけではないため、代表取締役等の住所に変更が生じた場合には、その旨の登記の申請をする必要があります。 代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合であっても、登記の申請書には代表取締役等の住所を記載する必要があるため、登記されている住所について失念することのないよう御留意ください。
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