2024/10/22

「相続させる」旨の遺言により相続財産全部を取得した者のみが参加した遺産分割協議の有効性

土地の所有権登記名義人である甲が平成26年に死亡し、乙と丙が甲を相続したが、相続による所有権の移転の登記が未了のうちに丙が平成27年に死亡し、その法定相続人がAとBである場合において、丙が生前、全ての相続財産をAに相続させる」旨の遺言書を残していた場合、甲名義の土地の所有権の移転の登記をするにあたって、遺産分割の当事者となる者は誰でしょうか?
 
 
 
 
 
「相続させる」旨の遺言により相続財産全部を取得した者のみが参加した遺産分割協議の有効性
 
 
遺産分割の協議は、共同相続人全員により行われる必要があり、一部の者を除外して行われた遺産分割の協議は無効になると解されています。
 
 
このケースでは、丙の法定相続人はA及びBとなりますが、丙は生前、その相続財産の全部をAに相続させる旨の遺言を残しています。
 
この場合において、甲名義の土地について相続による所有権の移転の登記をするにあたり、誰が遺産分割の協議の当事者となるのでしょうか。
 
この点につき、次のような先例があります(登記研究831 平成29・5)。
 
問 土地の所有権の登記名義人である甲が平成26年1月1日に死亡し、乙と丙が甲を相続したが、相続による所有権の移転の登記が未了のうちに丙が平成27年2月2日に死亡し、その法定相続人がAとBである場合において、登記原因証明情報として、①丙名義の平成26年3月1日付け「全ての相続財産をAに相続させる」旨の公正証書による遺言書及び②乙が当該土地を取得する旨に加え、Bによる遺留分減殺請求権の行使がない旨の記載がある乙とA名義の平成29年4月1日付け遺産分割協議書(後者の記載がないときは、その旨を記載した上申書)を添付して、甲から乙への相続による所有権の移転の登記が申請された時はこれを実行して差し支えないと考えますがいかがでしょうか。
 
答 ご意見のとおりと考えます。なお、遺産分割協議前にBによる遺留分減殺請求権の行使がされていたときは、乙、A及びBが遺産分割の協議を行う必要があると考えます。
 
 
なお、平成30年の民法改正により、遺留分の制度が大きく変わりました。従来、遺留分の権利の行使は、原則として物権の移転という効果が生じるものと解釈されていましたが、改正後は単なる金銭債権が発生することとされました。この改正は令和元年7月1日以降に発生した相続について適用されることになりますが、この場合においても上記の先例が通用するかどうかは疑問が残るところです。
 
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