2024/11/29
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法定相続分で相続登記がされた後の遺産分割による登記手続の簡略化 |
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法定相続分で相続登記がされた後の遺産分割による登記手続の簡略化 例えば、AとBの法定相続分での相続登記がされた後に、Aが甲土地を単独で所有する旨の遺産分割協議がAとBの間で行われた場合には、一度は法定相続分による相続がされた後に遺産分割が行われたという物権変動の態様・過程をそのまま登記に反映させるとの理解から、持分を失うことになるB(登記義務者)から持分を取得するA(登記権利者)への持分の全部移転の登記がされることになり、その登記手続は、一般の所有権の移転の登記手続と同様に、AとBの共同申請によることとされていました。 しかし、令和5 年3 月28日付法務省民二第538号通達により、法定相続分での相続登記がされた後に行う遺産分割協議による所有権の取得に関する登記手続については、所有権の更正の登記によることができるものとし、さらに、登記権利者が単独で申請することができるものとされました。 これは、法定相続分での相続登記をせずに、遺産分割による相続登記を直接申請したときと同程度の手続負担となるよう、当事者の負担の軽減を図ったものです。 ちなみに、この簡略化は、法定相続分で相続登記がされている場合についてのみの特例ですが、特例の利用が義務づけられているわけではなく、従来の取扱いも可能です。 登記権利者が単独で申請できるようになったことで、共同申請の場合には必要な登記義務者の登記識別情報が不要になります。 また、登録免許税も更正する不動産1 個につき1、000円になりますが、これに関しては、更正の対象となる不動産が多数あり、かつ、それらの固定資産税評価額の合計額が著しく低額であるときは、従来の取扱いの方が登録免許税が低額になることもあるので注意が必要です。 なお、この特例を利用して登記権利者が単独で登記を申請したときは、登記官は登記義務者に対してその旨の通知を行うこととされています。ただし、この通知の効力は単なる登記義務者への情報提供に過ぎないため、この通知を受けた登記義務者が別途、民事保全手続その他の登記の差止めに係る手続を行わない限り、登記官が登記手続の処理を中止・停止することはありません。
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