2024/6/6

【令和6年10月1日施行】代表取締役等住所非表示措置について

令和6年10月1日から、一定の要件のもと、株式会社の代表取締役等の住所の一部を登記事項証明書等に表示しないこととする措置(代表取締役等住所非表示措置)が始まります。
 
 
 
 
【令和6年10月1日施行】代表取締役等住所非表示措置について
 
 
 
目次
1.制度の概要
2.措置が講じられた場合の登記事項の表示
3.注意点
4.措置の要件
5.措置の終了
 


1.制度の概要
 
 
代表取締役等住所非表示措置は、一定の要件のもと、株式会社の代表取締役、代表執行役又は代表清算人(以下「代表取締役等」といいます。)の住所の一部を登記事項証明書や登記事項要約書、登記情報提供サービス(以下「登記事項証明書等」といいます。)に表示しないこととする措置です。
 
この措置は、商業登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第28号)によって創設された制度で、令和6年10月1日から施行されます。
 
 
 
2.措置が講じられた場合の登記事項の表示
 
 
代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合、登記事項証明書等において、代表取締役等の住所は最小行政区画までしか記載されないこととなります。つまり、住所が一切表示されなくなるわけではなく、市区町村まで(東京都においては特別区まで、指定都市においては区まで)の住所は記載されるということです。
 
なお、代表取締役等住所非表示措置の対象となる住所は、申出と併せて申請される登記によって記録される住所に限られます。
 
 
3.注意点
 
 
代表取締役等の住所が表示されないことで、個人のプライバシーが保護される反面、次のような注意点もあります。
 
(1)取引に支障や手間が生じるおそれがある
 
代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合、登記事項証明書等によって会社代表者の住所を証明することができないことになります。それによって、金融機関から融資を受けるに当たって不都合が生じたり、不動産取引等に当たって必要な書類(会社の印鑑証明書等)が増えたりするなど、一定の支障が生じることが想定されます。
 
そのため、代表取締役等住所非表示措置の申出をする前に、このような影響があり得ることについて、慎重かつ十分に検討する必要があります。
 
 
(2)登記義務が免除されるわけではない
 
代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合であっても、会社法に規定する登記義務が免除されるわけではありませんので、代表取締役等の住所に変更が生じた場合には、その登記を申請する必要があります。
 
 
 
4.措置の要件
 
 
代表取締役住所非表示措置を講じてもらうためには、次の要件を満たす必要があります。
 
 
(1)登記申請と同時に申し出ること。
 
代表取締役等住所非表示措置を講ずることを希望するには、登記官に対してその旨を申し出る必要がありますが、この申出は、設立の登記や代表取締役等の就任の登記、代表取締役等の住所移転による変更の登記など、代表取締役等の住所が登記されることとなる登記の申請と同時にする場合に限りすることができます。
 
 
(2)所定の書面を添付すること。
 
代表取締役等住所非表示措置の申出に当たっては、以下の区分に応じた書面の添付が必要となります。
 
① 上場会社である株式会社の場合

・株式会社の株式が上場されていることを認めるに足りる書面
 なお、既に代表取締役等住所非表示措置が講じられている場合は不要です。
 
 
② 上場会社以外の株式会社の場合

・株式会社が受取人として記載された書面がその本店の所在場所に宛てて配達証明郵便により送付されたことを証する書面等
・代表取締役等の氏名及び住所が記載されている市町村長等による証明書(例:住民票の写しなど)
・株式会社の実質的支配者の本人特定事項を証する書面(例:資格者代理人の法令に基づく確認の結果を記載した書面など)
 
なお、既に代表取締役等住所非表示措置が講じられている場合や、株式会社が一定期間内に実質的支配者リストの保管の申出をしている場合は、上記の書面の一部について添付が不要となります。
 
 
 
5.措置の終了
 
 
代表取締役等住所非表示措置が講じられた株式会社から当該措置を希望しない旨の申出があった場合や当該株式会社が本店所在場所に実在しないことが認められた場合などには、登記官が職権で当該措置を終了させることとなります。
 
なお、代表取締役等住所非表示措置を希望しない旨の申出は、登記申請と同時である必要はなく、単独で行うことができます。