2025/3/8

【実績紹介】被相続人の最後の住所が分からない場合の相続放棄の申述が受理されたケース

 
 
【実績紹介】被相続人の最後の住所が分からない場合の相続放棄の申述が受理されたケース
 

相続放棄をするために被相続人が亡くなった時の住所を調べていたところ、亡くなる数ヶ月前に住民票が職権消除されており、住所が分からない(住所不定)状態でした。
 
住民票の職権消除とは

職権消除とは、市区町村の職務に基づく正当な権限等により住民票を消除することです。住民票は、あらゆる行政の基礎となるものであり、住民記録と居住実態が一致していることが必要です。そこで、住民票の記録の正確性を確保するため、住民基本台帳法に基づき居住の事実について実態調査を行い、居住の実態がないと判断した場合に住民票の職権消除が行われます。
なお、住民票の職権消除となれば、住所の登録がどこにもないことから、いわゆる「住所不定」となり、あらゆる行政サービスが受けられなくなってしまいます。
 
相続放棄の管轄は家事事件手続法第201条で定められており、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所、つまり被相続人が亡くなった時の住所を管轄する家庭裁判所です。
 
家事事件手続法
第二百一条 相続の承認及び放棄に関する審判事件(別表第一の九十の項から九十五の項までの事項についての審判事件をいう。)は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。
 
ところが、被相続人が亡くなった時の住所が分からないので、これでは管轄が特定できません。相続放棄には期限がありますので、管轄が特定できずに申立てができないというのは非常に困ります。
 
この点、家事事件手続法には以下のような特例が定められています。
 
家事事件手続法
第七条(管轄権を有する家庭裁判所の特例)
 この法律の他の規定により家事事件の管轄が定まらないときは、その家事事件は、審判又は調停を求める事項に係る財産の所在地又は最高裁判所規則で定める地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。
 
そして、この条文中の「最高裁判所規則で定める地」については、家事事件手続規則に「東京都千代田区とする」定めがあります。
 
家事事件手続規則
第六条(法第七条の最高裁判所規則で定める地の指定)
法第七条の最高裁判所規則で定める地は、東京都千代田区とする。
 
したがって、住所不定で管轄が定まらない場合には、「東京都千代田区」を管轄する「東京家庭裁判所」が申立先ということになります。
 
念のため、電話して確認してみたところ、東京家庭裁判所に提出してもらって構わないが、裁判官の判断によって移送される可能性があるということでした。
 
期限が定められている手続で移送されるのは避けたかったため、被相続人が亡くなった時の住所を可能な限り調査したうえで申立てをしようと思い、役所に死亡届記載事項証明書を請求してみることにしました。
 
死亡届の記載事項証明書とは、死亡届の写しのことですが、秘密性の高い情報が記載されているため、原則非公開の書類とされています。ただ、一定の利害関係人で特別な事由がある場合に限り、その証明書を発行することができる場合があります。
 
今回の事情が「特別な事由」に該当するかどうかを聞いてみたところ、該当するという回答だったため、発行に必要な書類を送ったところ、特別な事由に該当するものの裁判所から指示があれば発行するということで、結局発行してもらうことはできませんでした。
 
上記のような経緯で(少しモヤっとしましたが)、ひとまず東京家庭裁判所に申立てをしたところ、特に何の連絡もないまま受理されました。
 
 

相続放棄の管轄については、基本的には住民票の除票を取得すれば特定することができる場合がほとんどだと思います。
 
以前は住民票の除票の保管期間が5年間だったため、被相続人が亡くなってから5年以上経過した後には取得できないこともありましたが、現在の保管期間は150年になっていますので、住民票の除票が取得できないために管轄を特定できないというなケースは少なくなってくると思います。
 
そうはいっても、中には今回のような理由で被相続人の亡くなった時の住所が分からないということはあるかもしれません。
 
相続放棄には期限がありますので、手続のことで迷いや不安がある場合は専門家への相談してみることも検討してみてはいかがでしょうか。
 
 
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